漫画「3月のライオン」を読むと、痛くて温かい気持ちになる

漫画「3月のライオン」を読むと、痛くて温かい気持ちになる 雑感

藤井聡太四段(14)の活躍で将棋に注目が集まっているが、将棋つながりということで、漫画「3月のライオン」(羽海野チカ、白泉社)をご紹介したい。

アニメ化や実写映画化もされご存知の方も多い作品だと思う。
詳細については、公式ホームページ等をご確認いただきたいが、15歳で将棋のプロ棋士となった「桐山零」を主人公に、彼や彼を取り巻く人々の人間模様を描いた作品だ。

痛くて温かい

「3月のライオン」を読んでの感想は、一言で言えば痛くて温かいだ。
抽象的な表現で申し訳ないのだが、個人的にはこの言い方が最もしっくりくる。
あくまでも個人的な感想なので、そこはご了解いただきたい。

羽海野チカさんは本作の他、「ハチミツとクローバー」(羽海野チカ、宝島社・集英社)も有名だと思う。
羽海野チカさんの作品の全てを読んだわけではないが、共通して抱くのは人の心の機微を描くのが上手いというかエグいという感想だ。
人の心の触れられると痛いところ・恥ずかしいこと・悲しいこと等、描ききっており、ここまで漫画で表現できることに感動するのだ。

よく作者は作品に自己を投影するというが、人の心の機微を描くためには、羽海野チカさんも、多かれ少なかれ、自分の心の中にある痛いことや恥ずかしいこと、悲しいこと等と向き合い、さらけだし、絞り出しているのだと思う。
勝手な想像ではあるが、作品を描くとき痛いことも含め自分の心と向き合うことで、苦しいことも多いのではないだろうか。
プロだから当たり前なのかもしれないが、それでもそんなふうに作品を世に送り出されていることに感嘆する。

人の心の痛くて恥ずかしいところまで描かれているので、読んでいてとても痛い気持ちになる。これは、描かれている痛くて恥ずかしいことが、自分にも共通しているからであろう。
だからこそ、痛くて恥ずかしいところに共感しているのだと思う。

一方で痛くて恥ずかしいところだけでなく、痛くて恥ずかしいことも含め包んでくれるような、人の心の温かさや強さも描かれている。
描かれる人の心の温かさや強さは、本来人が持っているものであり、人が持っていたいと思っているものであり、人が触れたいと思っているものだと思う。
人にもよるが、この人の心の温かさや強さは、今の世の中、日常的に触れる機会はそう多くはないのではないだろうか。
だからこそ、人の心の温かさを信じたい触れたいと思っているものにとっては、それは確かにあるのだと感じさせてくれ、温かい気持ちになるのだ。
ある意味、痛いことや恥ずかしいこと、悲しいことがあっても、人の心の温かさで救われるということを、伝えられているようにも感じる。
きっと作者も苦しいことがあっても、周りの温かい人にたくさん救われてきたのではないだろうか。
余計なお世話だが、作者の周りに温かい人がいてよかったと安心する。

自分がぐちゃぐちゃだなと思ったら読んでほしい作品

この作品は本当に多くの人に読んでほしい。
老若男女問わず、特に人生に疲れた時や人にうんざりした時、自分の心がぐちゃぐちゃだなと思ったときに、この「3月のライオン」を是非読んでほしい。
心がぐちゃぐちゃになるくらいの感性を持っている方であれば、必ずこの作品から感じ取るものはあると思う。

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